睡眠障害・発達障害部門

子どもの睡眠障害

睡眠障害では脳と身体の機能が低下し、日中の眠気に悩まされ、記憶力・判断力・注意力・意欲などが低下し、体がだるく疲れやすくなります。また、朝は起きづらくなり、起床時刻が乱れがちで、休日には昼過ぎまで眠ってしまうこともあります。起床時刻が日ごとに大きく異なると、体内時計が乱れ、自律神経・ホルモン・内臓の働きが混乱し、立ちくらみ・めまい・起立性低血圧・頭痛・食欲不振・便秘・寝つきが悪くなるなど多彩な症状がでます。そのため、日々の生活が不活発になり、学校生活などでは出来ないことが増えて、気持ちが消極的になり自己評価も下がりします。自信のない不安な気持ちや、遅刻登校や不登校になって体を動かす機会が減ると、睡眠障害が一層悪化し、子どもの心と体に深刻な影響を及ぼします。私たちは、子どもの育つ力を信じ、睡眠障害の治療を通して子どもたちが元気になることを願っています。

子どもの睡眠障害を疑う主な病状

夜の眠りでは、「朝起きることができない/目覚めない」や「寝つきが悪い」、「途中で目覚めて、再入眠できない」、「眠りが不十分なのに、早朝に目覚めて再入眠できない」、「眠っている間も脳が働いている感じがする」、「嫌な夢を毎晩みる」、「目覚めた時に熟眠感がない」などの気になる症状が続き、日中の眠気や授業中の居眠り、遅刻登校、不登校など日常生活・学校生活に支障をきたしている場合はご相談ください。また、睡眠障害では、立ちくらみ・めまい・嘔気・腹痛・頭痛・疲れやすい・食欲不振などの症状をしばしば伴います。
「入眠時に下肢がむずむずして思うように眠れない」や「入眠後数時間以内に、“寝床で座るなどの混乱した行動”、“寝床から起き上がって歩き回るなど複雑な行動”、“おびえたように泣き叫ぶ”、または“寝床で座るなどの混乱した行動”が突然に起こる」、「生後6か月以降の乳幼児で長期間持続する激しい夜泣き」などの症状でもご相談ください。
なお、睡眠時無呼吸症候群を疑う「入眠中にイビキをかいて、一時的に呼吸が止まることがある」の場合には、当院には耳鼻科医師や呼吸器内科医師が勤務しておりませんので、他院に紹介させていただくことになります。ご了承ください。

睡眠障害や体内時計の乱れがもたらす症状は自覚症状であることが多く、周囲から理解されないことも少なくないようです。それどころか、24時間動いている現代社会においては、自覚症状に悩む本人でさえ、その原因・理由を十分に認識できず、頑張ることができない自身を責めてしまうこともあるようです。注意が必要です。

外来診療について

  • 初診時(最初の診察)の年齢は、生後6か月から中学3年生までにさせていただいております。私たちは小児科医ですので、中学3年生までの診療が原則です。例外的に、小児科医が対応できる範囲内で18歳まで診させていただく場合があります。
  • 眠れない乳幼児(6か月~4歳未満)のために夜泣き外来を行っております。
  • 発達特性のある子どもさん(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、知的発達症)の診療では、睡眠障害を合併している子どもさんに限らせていただきます。なお、発達性協調運動症や限局性学習症でお困りの子どもさんについては、睡眠障害の有無に関係なく、評価と診断を行い、ご本人・ご家族の相談に応じております。
  • 睡眠障害の状態を把握するために、すいみん日誌の記録をお願いしております。ホームページ掲載のすいみん日誌をダウンロードして、受診日までの記録をお願いします。その記録をもとに診察いたします。

すいみん日誌 PDF版

スタッフ紹介

氏名 役職 卒業年次 専門医資格など 専門領域
菊池 清
  • 子どものリハビリテーション・睡眠・発達医療センター長兼 診療部 小児科部長
昭和52年
  • 日本小児科学会認定小児科専門医
  • 日本内分泌学会認定内分泌代謝(小児科)専門医
  • 「子どもの心」相談医(日本小児科医会)
  • 日本医師会認定産業医
  • 医学博士
  • 臨床研修指導医
  • 第1種放射線取扱主任者
  • ICD制度認定インフェクションコントロールドクター
  • 成長科学協会地区委員
  • ドクターオブドクターズネットワーク ~ドクターが薦める専門医~
  • 小児睡眠障害
  • 小児内分泌代謝
  • 小児心身症
豊浦 麻記子
  • 子どものリハビリテーション・睡眠・発達医療センター副センター長
  • 神経小児科部長兼小児科部長
平成9年
  • 日本小児科学会認定小児科専門医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医
  • 小児科
豊田 有子
【非常勤】
  • 小児科医師
平成13年
  • 日本小児科学会認定小児科専門医
  • 日本内分泌学会認定内分泌代謝科(小児科)専門医
  • 小児科
  • 小児内分泌代謝

入院治療について

外来診療で治療が困難な場合には、入院治療を行います。医師・看護師・臨床心理士・作業療法士・言語聴覚士・薬剤師・栄養士・社会福祉士など関係する専門職員が連携してチーム医療を提供します。

入院期間は患者さんごとに異なりますが、標準的な治療プログラムは次の通りです。睡眠障害の状態を把握するために、入院時検査(終夜睡眠ポリグラフィー検査、深部体温測定、血液検査、起立試験、画像検査など)を必要に応じて行います。その後、入眠時刻・起床時刻・食事時刻を定めた規則的な生活、早朝の高照度光療法、運動療法、ソーシャルスキルトレーニング、心理評価・認知行動療法などを組み合わせた1か月程度の治療プログラムを提供します。入院期間の後半には、ご本人・ご家族と相談しながら、「自宅に試験外泊」や「学校への試験登校」なども行います。必要に応じて、薬物治療も行います。関係スタッフの支持的関わりを通して、患者である子ども本人が前向きに治療に取り組むことができるよう努めております。

なお、公立小中学校在籍の児童生徒では、希望すれば兵庫県立のじぎく特別支援学校の訪問学級で学習支援を受けることができます。

ナースステーションの写真
ナースステーション
病床に設置された高照度光治療器の写真
病床に設置された高照度光治療器

夜の睡眠の役割(生理的意義)

眠っている間にも全身の細胞・組織・内臓・脳は働いており、成長・発達・健康維持に必要な生理的活動が行われています。夜の眠りの間に、脳内老廃物が効率よく排泄され、記憶の定着など脳神経細胞の働きが良くなり、抗酸化作用のあるメラトニンなどが有害な活性酸素を処理し、身体の傷も効率よく癒され、脳も身体も成長・発達します。そのため、睡眠が慢性的に不足すると、有害物質であるアミロイドβ(アルツハイマー型認知症の原因物質)などが脳内に蓄積し、炎症性サイトカインが上昇し、耐糖能の低下などが起こり、記憶力・注意力・判断力・自制力などが低下し、体力も低下し、糖尿病・高血圧症・認知症などになる危険性が高まります。

また、夜の睡眠には体内時計を整える作用もあります。人の身体を構成する数十兆個の細胞が歩調を合わせて働くことができるように、全ての細胞に時計の仕組みがあります。眠りから覚めて目から入る光刺激と朝食の刺激により、これら全身の体内時計の時刻合わせが行われています。すなわち、朝の目覚めの時刻と朝食の時刻が毎日ほぼ一定になるような生活をしていると、全身の細胞が歩調を合わせて働くことができて、自律神経バランスやホルモン分泌などが整い、血圧・脈拍・体温調節・胃腸の働きなどが安定し、体調が良くなります。

子どもにとって望ましい睡眠時間

年齢・体質・日中の活動量に応じて必要な睡眠時間は変化します。米国睡眠医学会から子どもにとって望ましい睡眠時間の目安が示されており(J Clin Sleep Med 2016; 12(6):785-6)、人種・国境を越えて、この基準が受け入れられています。生後4か月から11か月では12~16時間、1~2歳では11~14時間、3~5歳では10~13時間、6~12歳では9~12時間、13~18歳では8~10時間です。なお、大人は7~9時間とされています(Sleep Health 2015; 1:40-3)。

睡眠障害の原因

睡眠障害の原因は体質要因・心理的要因・環境要因に大別され、互いに影響しあって発病します。

体質要因では、生得的に上手く眠ることができない体質、感覚過敏のために眠りが妨げられる体質、アトピー性皮膚炎(皮膚の痒み)やアレルギー性鼻炎(鼻閉)のために眠りが妨げられる体質などが挙げられます。睡眠時無呼吸症候群が起こりやすい体質としては、小さい下顎、喉頭軟化症、高度肥満、アデノイド肥大・扁桃肥大があります。また、覚醒作用のあるオレキシンの欠乏による過眠症体質(ナルコレプシー)もあります。

乳幼児では、生後6か月以降も眠り続ける力や起き続ける力が十分でなく、激しい夜泣きが続き、日常生活に支障をきたすような乳幼児不眠症があります。発育・発達への影響が心配されるような場合には、治療が必要になります。

不安感・恐怖感や嬉しくて興奮し過ぎた場合などの心理的要因でも、寝つきが悪くなり、眠りも浅くて途中で目覚めたりします。

環境要因では、24時間活動し続ける現代日本社会を背景に、「夜型生活習慣の保護者の影響」や「塾・習い事・部活動などを頑張り過ぎて睡眠時間を削った」、「特定のものにのめり込み過ぎて睡眠時間を失った(ゲーム依存症など)」、「夏休みなどの長期休暇で夜更かし朝寝坊の習慣がついた」、「学校で居場所を失い日常生活が不規則になった」などが挙げられます。

子どもの睡眠障害の予防と治療の原則

睡眠障害の予防と治療では、「質の良い眠り」・「望ましい睡眠時間」・「(体内時計同調のために)起床時刻をほぼ一定にした規則的な睡眠リズム」の3要素の確保が重要です。

睡眠障害の予防は、健康教育として「夜の睡眠の生理的意義」とともに、これら3要素の確保の重要性を家庭や教育現場で伝えることが大切です。

また、朝起きることができない訴えや、遅刻登校・保健室登校・授業中の居眠りなどの気になる児童生徒では、睡眠日誌を2週間ほど記録することにより睡眠障害の早期探知・早期対応が可能になります。睡眠日誌を使って生活の見直しなどを行い、不登校を伴うような重症の睡眠障害への進行を防ぐことができればと願っております。

睡眠障害治療の原則は、睡眠障害の原因を踏まえて、支持的関わり・認知行動療法・運動療法・薬物療法などを併用し、保護者や学校関係者の理解のもと、前記3要素を当事者である子ども自身が自分の意思で確保できるよう支援することです。

子どもの睡眠障害の主な病気の解説

1. 不眠症
乳幼児不眠症は、子どもの発育・発達に影響を及ぼす心配があります。生後6か月以降で、眠る環境を整えても、「夜間にまとめて眠れない」や「夜間睡眠中に途中で目が覚めて、泣き叫んだりして再入眠までに時間がかかる」、「眠る時刻・起きる時刻が定まらず、日ごとに大きなばらつきがある」などの気になる眠りがあり、そのために「日中に不機嫌・かんしゃく・不活発」や「離乳食が進まない」、「動作緩慢で何事にも時間がかかる」、「眠たそうで不規則に昼寝する」などがあればご相談ください。
2. 睡眠時関連呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群など)
睡眠中の呼吸異常症です。眠っている間に、血液中酸素濃度が低下し、睡眠の質が悪くなります。眠っても、疲れがとれず、記憶力・注意力・意欲が低下し、昼間に強い眠気に襲われます。扁桃・アデノイドの肥大や肥満があり、口呼吸やイビキがあれば疑います。また、下顎が小さく、睡眠中に喘鳴がある場合も疑います。
3.概日リズム睡眠・覚醒障害
体内時計の乱れを伴った睡眠障害です。眠る時間帯が通常と異なり、夜更かし朝寝坊の睡眠相後退型、眠る時間帯が定まらない不規則睡眠・覚醒型などに分類されます。昼夜逆転する場合もあります。睡眠時間が長くとれても、体内時計の乱れによる自律神経バランスやホルモン分泌の不安定さがあり、意欲がわかず、体調はすぐれません。不登校の原因にもなります。
4. 過眠症
眠り過ぎる病気です。代表的なものにナルコレプシーがあります。昼間に場所や状況を選ばずに起こる、強い眠気発作が主な症状です。筋肉の力が抜ける脱力発作を伴い、倒れたり、膝の力が抜けたりすることがあります。15歳前後から発症することが多く、原因はオレキシンの欠乏症です。
5. 睡眠時随伴症
眠っている間に起こる無意識の行動として、夜驚症と遊行症(夢遊病)があります。入眠後1~3時間ころに、睡眠中に突然叫んだり、泣いたり、怒ったり、歩いたり、走り回ったり、階段の昇り降りが1~10分間ほど続き、自然に治まり再び眠りにつく発作です。本人は何も覚えていないのが特徴です。原因は不明です。発作時に怪我をしないような配慮が必要です。規則的な生活リズムで適切な睡眠をとることにより、症状が軽快する場合があります。回数が多くて毎晩のように起こる場合には、眠りの質を改善させるための内服治療が必要になる場合があります。
夜尿症も睡眠時随伴症のひとつです。小学校入学以降も続く場合を問題にします。「夜尿アラーム療法」など治療法がいくつかありますが、その効果は個人差が大きいようです。多くの場合、脳と身体の機能が成熟する思春期ころまでに自然に消失します。なお、尿回数が多く、尿量が多く、水分をたくさん飲む場合には、尿崩症などの病気の可能性がありますので、かかりつけ小児科医に相談してください。
6. レストレスレッグズ症候群
むずむず脚(あし)症候群とも言います。主として下肢に不快な感覚が生じ、じっとしているとひどくなるので、下肢をこすり合わせたり、たたいたり、歩き回ったりして眠れなくなります。原因は不明です。子どもでは「心配事を減らして眠りやすくする」、「内服治療でしっかり眠れる工夫をする」などにより、症状が軽快または消失することをしばしば経験します。