小児肢体不自由部門

2019年度より、肢体不自由部門が開設となりました。当部門では、検査や観察、聞き取りなどを通じて評価を行った後に一人ひとりの目標を設定して、発達の促進や機能の回復を目的としたリハビリテーションを行います。日常生活で、できることを少しずつ増やしていき、子供たちが無理なく安心して自分らしい生活を送れるように、小児整形外科医、小児科医、リハビリテーション科医、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士が連携して最善の医療を提供します。また、子どものライフステージに沿って、子どもとその家族がより良い生活を送れるように、必要に応じ保育所や学校、関連する福祉事業所など外部機関との連携を図るよう努めます。さらに障がいを持った子供たちの生活をよくするために様々な環境調整をさせていただくことがあります。
また、足挿板、靴、短下肢装具、歩行器、座位保持装置、立位台、バギー、車いすなどの年齢や状態にあった補装具を提供します。

対象となる疾患

脳性麻痺、脳炎・脳症後遺症、頭部外傷後遺症、筋ジストロフィーなどの筋疾患、染色体異常、二分脊椎、骨形成不全などの骨系統疾患、運動発達の遅れ

代表的な疾患を記載します。

1. 脳性麻痺

脳性麻痺とは、妊娠中またはお産のときに、何らかの原因があって、その結果、麻痺などの運動機能に障害が起こってしまったお子さんです。一般的には非進行性と言われております。原因は様々ですが、出産時に赤ちゃんの脳へ酸素の供給がうまく出来ないことで起こる低酸素脳症や、ビリルビンが脳の基底核という場所に蓄積する核黄疸などで起こります。 症状によって、以下の様な分類があります。混合型の方もいます。

痙直型
体の一部または全身に力が入り自分の思うように手足を動かせません。
アテトーゼ型
自分の意志とは無関係に手足が動いてしまいます。
低緊張型
力が入らず姿勢保持ができません。
失調型
体や四肢の震え、バランスの悪さなどがあります。

症状としては、手足の麻痺、筋緊張亢進・低下、反り返りが強い、手足がいつも動いている(不随意運動)、バランスが悪い、知的障害、視覚障害、てんかん、嚥下や噛むことが上手に出来ないなどの症状を認めます。

2. 筋ジストロフィー

筋ジストロフィーとは、年齢と伴に筋肉が徐々に壊れていき、進行性に筋力低下をきたす遺伝性の病気です。心臓や呼吸機能等の異常を認める場合もあります。
筋ジストロフィーにはデュシェンヌ型、ベッカー型、福山型、肢体型など様々な病型があります。筋強直性筋ジストロフィーは筋強直症候群に分類されます。ここでは、一番多いデュシェンヌ型を記載します。
男の子病気で、ジストロフィンの遺伝子診断で診断が可能となりました。偶然見つかったCK(クレアチンキナーゼ)の上昇や、歩き方がおかしいなどの筋力低下の症状がきっかけで診断に至ることが多いです。
始めの症状としては歩行開始がやや遅く、3~5歳頃より転びやすい、走れないなどの筋力低下を認めます。その頃より手を膝の上に置いて立つ登はん性起立(Gowers徴候)、腓腹筋の仮性肥大を認めます。6~7歳頃より動揺性歩行が目立ってきて、10歳頃に歩行が出来なくなります。20歳頃より拡張型心筋症や呼吸障害を認めます。最近は人工呼吸器やカフアシスト等の医療機器の進歩で平均寿命も伸びて来ています。足関節の拘縮や側弯も認めます。知能障害や、自閉スペクトラム症を伴うこともあります。

3. ダウン症候群

ダウン症候群は、21番目の染色体が1本多く3本あるため、21トリソミーとも呼ばれます。釣り上がった目、目と目の間が広がっている、鼻が広くて低い(鞍鼻)などの特有の顔貌があります。 多くの場合、運動や知的な発達に遅れがあります。筋肉が柔らかく関節の過伸展、心臓や消化器系の疾患、甲状腺機能低下症、眼の疾患、難聴、環軸椎脱臼、臍ヘルニア、扁平足などを合併することがあります。その他、口唇・口蓋裂、白血病、早期老化、性腺機能低下症などを認めることもあります。

4. 二分脊椎

二分脊椎とは、赤ちゃんの脊髄の形成に異常が発生することによって生じる先天性の障害のことです。多くの場合、腰椎や仙椎などで脊柱管の形成に異常がみられます。その異常が外から見てすぐに分かる顕在性二分脊椎症と、見た目ではわかりにくい潜在性二分脊椎があります。そのため、生後すぐに指摘されることもあれば、学童期以降になってから症状が現れることもあります。
下肢の麻痺、排尿障害、排便障害、けいれん、水頭症などの症状を認めることがあります。キアリ奇形と言って、脳の異常を合併する場合もあります。

5.運動発達遅延

乳幼児健診などで、頸が座るのが遅い、歩き始めが遅いなど指摘され、運動発達の遅れがあるお子さんです。追いついて正常発達になることも多いです。しかし、中には知的障害や発達障害のお子さんもおられます。また、筋疾患や神経疾患の方もおられますので、検査が必要な場合があります。

小児理学療法(小児PT)

子どもの発達の促進や運動機能の向上・維持を目指します。座る、立つ、歩行などの基本的身体機能の促進、歩行器などを使用した移動手段の向上・維持、運動機能を保つため関節拘縮の予防などのリハビリテーションを行います。また、呼吸障がいのある子どもには、その機能の維持や改善のために呼吸に対するリハビリテーションも行っております。乳幼児期の子どもの場合、姿勢や運動の発達を促すために、生活場面での遊び方やかかわり方を家族や保育園の先生方に助言し、児童期や青年期になったら、より具体的に生活場面での目標を設定し、家庭や学校での練習の仕方、関節や筋肉が固くなることを予防する方法などを、家族や先生方と一緒に考えていきます。

小児作業療法(小児OT)

子どもの食事、着替え、トイレ等の日常生活の自立の促進、遊びや学習活動などの困難さの改善を目指します。それらの困難さの原因が、麻痺等の身体の障がいだけにとどまらず、協調運動、感覚や認知、そして心理・社会的な側面など様々な要素を考え、全体像を理解するよう努めます。そのためには日々の練習が必要になってくることもありますが、子どもが嫌がらず、またサポートする家族も楽に練習に取り組むことができるような提案もいたします。その中で、必要に応じて保育所や学校、関連する発達支援事業所などとも連携して生活の改善を図ります。
食事や読み書きの学習など子どもが営む生活行為の中では様々な「スプーン」や「箸」、「鉛筆」や「ハサミ」など様々な道具を用います。またもっと特別な場合には「パソコン」や「タブレット」なども学習環境にとりいれる場合もあります。またそれらを上手く用いるために「椅子」や「テーブル」など設定も重要になってきます。作業療法では子どもの生活行為の状態に合わせて、様々な道具や環境の設定・調整をします。

小児言語聴覚療法(小児ST)

乳幼児期や児童期の聞く、話すなどのことばやコミュニケーション、食べる、飲み込むなどの摂食・嚥下、小児の失語症及び注意や記憶の障害等の状態を把握し、指導や援助を行います。
発達に合わせた生活習慣や遊び、はたらきかけの方法、家庭や学校で日常的に取り組めるような個々の能力や特性に合わせた学習方法の提案を行い、保育・療育施設、学校、事業所との情報交換、連携を行います。
発声・発語器官の運動の問題や知的な問題により発語やことばによるコミュニケーションが困難な場合には「身振り」や「絵記号」、「コミュニケーション機器」といった補助・代替コミュニケーション手段の活用について選定や活用方法の検討を行います。