理事長からのメッセージ

出石精和園開設50周年記念セミナー あいさつ(平成29年9月)

 兵庫県社会福祉事業団 理事長の山本です。
 本日は、出石精和園開設50周年の記念セミナーにお運びいただき、ありがとうございます。
 また、平素より兵庫県社会福祉事業団の活動にご理解ご支援を賜っておりますこと、お礼申し上げます。
 障害のある人が働くことを、地域全体で応援することは、その地域の魅力を高めることにつながると思います。
 今から14年前、厚生労働省から兵庫県庁に戻った私は、障害福祉課長になりました。
 いろいろな試みに挑戦しましたが、県庁で知的障害のある人に働いてもらう試みもしました。
 長谷川くんという男の子に来てもらうことにして、課の庶務を担当する課付の方に「隣に座っていただくので、いろいろ教えてあげてね。」とお願いしたら「私がですか。」と、嫌な顔をしました。
 しかし、とても明るく、楽しい長谷川くんが働いてくれるようになって、部屋の中の様子が変わってきました。
 1つは、職員が名札をつけるようになったのです。
 長谷川くんは、漢字が得意です。覗き込むように名札を見て「山本さん」と呼んでくれます。そのたびに「山本課長」と直します。
 最初に、私がハンコを押した決裁を、部屋のみんなに配る仕事をお願いしました。職員も30人以上で、決裁板の数も相当になります。 長谷川くんは、漢字が得意ですので、座席表を見ながら担当のところに配っていましたが、途中からは、部屋の真ん中の机の上に決裁を積んで「○○さん」と呼んで、取りに来させるようになりました。これは早い。
 それから、長谷川くんは、人が言い合っているのが嫌みたいで、私が部下の職員と議論になると「けんかは、いけませんね。」とあわてて間に入りに来ます。
 元気な長谷川くんですが、ずいぶんプレッシャーもあるみたいで、金曜日の夕方になると、ルンルンしてきます。
 仕事が終わると、窓際の係長の席をまわり、ひとりずつに「○○さん、さようなら。」とあいさつをして回ってから帰ります。2周回って帰るときもあります。
 そうこうしているうちに、気がつくと、職員同士も大きな声であいさつをするようになりました。
 長谷川くんが来て半年、職員は名札をつけて、大きな声であいさつをするようになりました。
 半年たったある日、あんなに嫌な顔をしていた課付の人が「課長、明日、お弁当持ってこないでください。昼食会をしますので。」と言いました。
 長谷川くんは半年の勤務でしたので、最終日に職員が自発的にお別れの昼食会を開いてくれたのです。
 みんなに囲まれて、嬉しそうにお昼を食べている姿を見て、障害のある人と一緒に働くということは、こんなに職場を変えるのだと実感しました。

 しかし現実は、いい話ばかりではありません。
 発達障害のある男の子が、お年寄りの施設に就職しました。少しとんちんかんなことをするときもありますが、笑顔をつくって一生懸命働きます。
 でも施設で働く女の人は、そんな子をいじめて、いじめて、とうとうやめさせてしまいます。
 「こんなこと言うたったら、困った顔しよったわ。」
 得意げに話をして、笑っています。
 やめさせられたことを知った男の子のお母さんが、その子に言います。
 「何で困っている時に言うてくれへんかったん。私はあんたの親なんよ。」
 男の子は、悲しそうに答えます。
 「親やから言われへんねん。怒るやろ。悲しむやろ。ええねん。もう終わったことやから。」
 作り笑顔で何とか障害を乗り越えて働こうとする子がいます。それを笑いものにして、やめさせてしまう人もいます。これも障害者雇用の現実です。

 但馬には、障害のある人を受け入れる、やさしい人情があると思います。
 そして私たちは、出石の街中にも、豊岡の市役所の中にも、村岡にも、障害のある人が働くお店を出させていただいています。おかげさまで繁盛しています。
 やさしい但馬に感謝し、これからも私たちの活動にご支援いただきますことをお願いし、私のあいさつといたします。
 
 ありがとうございました。



職員へのメッセージ 「チェンジ、変わろう」 (平成29年8月)

 古代日本では、言葉には「言霊(ことだま)」という不思議な力が宿っていると信じられており、言葉には、発した言葉どおりの結果を生む力があるとされていました。
 私は、現在でも「言葉が認識を生み、認識がアクションを生み、アクションが変化を生む」と信じています。
 しっかりとした時代認識を語り合い、これからの時代に対応できる変化を生んでいかなければ、私たちは、次の時代の景色を見ることができないのです。
 キツネが獲物を捕える能力を高めたら、ウサギやネズミは速く逃げたり、上手に隠れたりする力を磨かないと滅びかねません。キツネと競ってウサギなどを狙うオオカミだって同じです。 生き物は、たえまない競争を続けることで種を保っています。一見のんびりとした風景の中にも、学ぶべき成功の秘訣はあります。

 人々の高齢化が進み、障害の重度化が進むことに対応して、私たちの活動も、新しい分野に挑戦し、新しいサービスを提供する努力を続けなければなりません。
 介護度の高い在宅の高齢者は、着実に増加します。この方々へのサービスを本格的に展開する必要があります。グループホームで人生の最後を看取ることにも対応していかなければなりません。 障害のある人が、その人らしく働ける分野も開拓しなければいけません。
 この夏、皆さんは、それぞれ、課題を設定したうえで、新たな分野に挑戦して下さい。

 最後にチャールズ・ダーウィンの言葉です。
「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。」
 暑い夏を、熱く過して下さい。



職員へのメッセージ 「ハビタブルな星に」 (平成29年4月)

 皆さんは「ハビタブルな星」という言葉を聞かれたことがありますか。
 太陽系にも寿命があります。10数億年後、もし人類が生存していたら、そしてその時、地球に住めなくなれば、他の星をさがして移住しなければなりません。

 太陽系に最も近い恒星「ケンタウルス座のアルファ星」は4光年先にあります。多くの人材と費用をかけて、探査機の開発が行われるのは、人類が生き残れる道が他にないからです。

 何の話をしているかと言いますと、私たちの発想には2つの「クセ」があるということです。
 その発想の「クセ」が現実の意思決定と最適な意思決定の間の「ずれ」を生んでいるのです。

 「クセ」の1つは、現実性のバイアス(偏り)です。
 人は、遠い将来の利益より近い将来の利益を優先させます。私たちは、今すぐ手に入る利益を非常に重視します。
 もう1つの「クセ」は確実性のバイアス(偏り)です。
 100%確実な場合と1%でもリスクがある場合とでは、通常のリスク回避だけでは説明がつかないほど認知に隔たりがあります。私たちは、わずかなリスクを嫌い、チャンスを見逃します。

 先ほどの例を見るまでもなく、先を見通しリスクを回避しながら挑戦していかなければ、これからの社会を乗り越え、 少なくとも、今と同じくらいの幸せを感じることのできる社会を子や孫に残していくことができないと思います。
 その責任は今を生きる私たち全員にあると思いますが、とりわけ私たちは、今の、そして未来の人たちの幸せのために、大きな役割が果たせるのではないかと思います。
 ご一緒に、頑張りましょう。



事業団広報誌「青い鳥」 就任のごあいさつ (平成29年4月)

 理事長に就任しました山本です。どうぞよろしくお願いします。

「前向きに、明るく、逃げずに」と新規採用職員の方々にお願いしました。
 私たちは、少し前を見て新しいことに挑戦することが苦手です。誰だって昨日のままの明日の方が安心ですよね。でも、人々のありようが変化している今、そんなことは許されません。
 「ありったけの力で走り続けなければならないのよ。その場に留まっているためには。」
ルイス・キャロルの小説「鏡の国のアリス」で赤の女王がアリスに語りかけた言葉です。

 私たちは、現在私たちのサービスを利用してくださっている方々に、そして、将来利用してくださる方々に、少なくとも今と同じくらいの満足をしていただける サービスを提供し続けるためには、不断の努力、新たな試みを重ねていく必要があります。
 私たちの「めざす」ものは何でしょう。まず、「安全と安心」。そのためには、安定した運営が基本です。その上に立って、将来に亘って人々の「安全と安心」の場を提供することです。

 2つめは、人々の「自信と誇り」を守ることです。「あわじ荘」のめざす「あなたらしさ」の応援です。
西播磨に住んでいた頃、山の中のひとり暮らしのおばあさんに、関西福祉大学の学生が「おばあさんは、何でこんなところに住んでいるの」と聞いたそうです。 そのときのおばあさんの答えは「ここが私のお城だからよ」だったと聞きました。人々の誇り高い暮らしを守ることが私たちのミッションだと思います。

 3つめは、私たちの活動で「地域の元気」をつくることです。医療・福祉の人材が足りませんが、逆に見れば、私たちの活動は地域の雇用と活力を生んでいるのです。
 夢のような福祉の国の話は、この国の話ではありません。幸せの「青い鳥」は、どこか遠くの国にあるのではなく、私たちの目の前の不完全な現実の中にしかありません。
 そして、その現実の中からみんなで力を合わせて創っていくものだと思います。
 ご一緒に頑張りましょう。

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